私的に録音物をネット上に置くと違法? 「ミュータ事件」判決の余波
5月25日、東京地裁において判決が出た「ミュータ事件」はネット上に大きな衝撃を与えた。原告は音楽ストレージサービス、ミュータ(MYUTA)を運営するイメージシティ株式会社。被告はジャスラック(社団法人日本音楽著作権協会)だ。
これはミュータが行っていた、自分の持っているCDなどの音源ファイルを携帯用にエンコードし、アップロードさせることで携帯着うたとしてダウンロードできるというサービスが、著作権侵害にあたるとジャスラックが申し立てたことに対する裁判。結果はイメージシティ側が敗訴し、ミュータのサービス停止が決定した。
ジャスラックはこの判決を受けて早速プレスリリースを出している。中でも「今回の判決は、ユーザに対し著作物をアップロードさせるシステムを提供するというサービスについて、そのサービス提供者に著作物の利用主体としての責任が及ぶことを明確に示したものであり、高く評価されます」(プレスリリースより引用)という一文は大きな波紋を呼んだ。すなわち、全てのオンラインストレージに対して著作物のアップロードを行うことは著作権侵害に当たるということなのかと。
ネット上のブロガーもこの判決に大きく反応した。曰く「ネットストレージを持ってるところは全部違法?」「コインロッカーにCD預けてたらコインロッカーを貸してる会社が著作権違反で捕まったようなもの」といった様子だ。
ではミュータのサービスのどこがいけないのだろうか。まず自分の持っているCDを個人使用目的でエンコードすることは、私的複製の権利が認められており、適法であるはずだ。さらにこのミュータのサービスでは、ダウンロードは不特定多数の誰かが行えるものではなく、アップロードした本人のみに限られている。これは公衆送信権には抵触しないはずであり、実際過日判決の出たまねきTV事件(ソニーのロケーションフリー機器を使って、特定個人に対して録画番組の視聴ができるサービス)に於いてはこれに抵触しないという判決が下されている。今回のミュータの場合もこれに近いサービスと言えるが、果たして何が違うのか。
複製行為の主体と「自動公衆送信」が問題点
弁護士の落合洋司氏は今回の判決に対して次のように語る。
「判決文を読むと、今回の問題点は次の二点でしょう。
一:問題となっているサービスにおける音楽著作権複製の主体は誰か
二:サービス運営者が「自動公衆送信」を行っていると言えるか
まず一については複製行為自体には争いがないとされており、ただ複製行為の主体が利用者でなく運営者であると断定し、その点で私的複製ではないとしています。この判断に対しての異論はあるかと思いますが、判決はこのサービスの特質が重視されていることに起因しており、ストレージサービス全般を念頭に置いたものではないありません。つまりこの判決を持ってストレージサービス全般が違法と見るべきではないということです。
二に関しては、アップロードしたファイルがその特定の利用者のみが利用できるものという特質を無視し、伝達される情報というものを「伝達される情報全体」と捉え、伝達される対象が「不特定」だから公衆へ向けて送信される、という誤った論理に立脚しているとしか思えません。今後、上級審における更なる検討を強く期待したいというのが、私の感想です」とのこと。誤った論理の展開がなされているという意見だ。
イメージシティ側は、「判決の内容を確認している最中で、今後の対応を検討している」ところだという。このような誤った判例が残ることにより、日本のネットビジネスの未来に大きなキズを残さぬよう、上級審での更なる検討を切望するところである。