動画配信支援企業の米Brightcoveは、New York Times、トランスコスモス米子会社Transcosmos Investments & Business Development、IAC/ InterActiveCorp、その他ベンチャーキャピタル会社や金融会社などと今年1月に資金提供をした。民放キー局のサイト制作を手がけるテレマーケティング国内大手のトランスコスモスからの出資も受けることとなった。この資金調達により、日本市場参入を決めたBrigh tcoveは、ユーチューブ以降、動画配信サービスにおいて大きな流れを作っていくことになりそうだ。
Brightcoveは、小規模な制作会社から大手メディア企業まで幅広い映像出版社を対象に、自社の番組をインターネット経由で利用者に配信できるインターネットTVサービスを提供している。これまではAOLやTiVoなどの企業と提携してきた。
素人映像の投稿、著作権を無視した映像の投稿などでアクセスと話題を稼ぎ、グーグルに買収されるまでに至ったユーチューブのいわば、「素人の乱」的成り上がりに対し、著作権問題などの対応をクリアしたBrightco veをはじめとする「玄人の乱」の幕開けると言えるのではないか。会員数1000万人を突破したミクシィの動画サービスが振るっていないように見えることからも推測されるが、これからの映像コンテンツは、プロ映像とアマチュア映像の二極化が顕著となり、観るに忍びない映像は実質アクセスが増えず淘汰されていくだろう。敷居の低い一般利用者参加型のサービスから映像配信は始まったが、よりプロフェッショナルなものに軸が移っていくのではないか。
この背景には、動画共有のビジネスモデルが確立されてきたことと、投稿された動画ファイルを著作権や公序良俗の観点から問題ないかを技術的に判断できるフィルタリング技術の開発が進み、著作権等問題の解決が見えてきたことがある。
Brightcoveの狙いと戦略は、こう。2004年のBrightcoveの設立時に、5年以内にテレビへネット上のコンテンツを配信することを視野に入れていたが、現在は、パソコン上で動画配信が当たり前になった。近い将来は、テレビはもちろん携帯電話やゲーム機を含んだあらゆる機器に動画配信ができるシステム構築を目指す。
米国では、テレビ視聴の時間よりもネット利用の時間が増えているが、これは日本にも当てはまるかもしれない。そして、米国人が動画視聴の手段としてテレビ画面を好むという事実を裏付ける面白いデータがある。調査会社の米Ipsos Insightによると、動画をオンラインで見たり、ダウンロードしたことのある人でも、テレビ番組や映画を含む動画コンテンツの75%をテレビ画面で見ており、パソコン画面で見る比率は11%。また、米国の家庭の27%がホームシアターシステムを、20%が大型画面のプラズマか液晶テレビを所有していることが背景にあるとしている。
Brightcoveは、いつでもどこでも、どんな動画コンテンツでも見られるというコンセプトで展開していくため、一つの場所に動画を見に行くというユーチューブの方向性とは異なる。ブロードバンド環境が良く、多くの企業が参入する中、広告市場も伸びている日本で、Brightcoveは、どう展開していくことができるか。動画制作会社、新聞・雑誌の紙媒体メディア、レコード会社、そしてテレビ局までも巻き込み、マネタイズに結びつけることができるか正念場となる。