これまで、リアルは定額聴き放題+アラカルトシステムのラプソディ(Rhapsody)を運営。MTVもマイクロソフトのPlay For Sure技術を使ったURGEを運営し、MTVというブランド力と相まってある程度の認知度とシェアを獲得していた。この二つのユーザーが一つになり、さらに携帯大手であるベライゾンの参加を伴うことで、音楽配信業界にかなり大きな影響を及ぼす可能性がありそうだ。iPod、iPhoneは未だ単体での音楽配信に参入していないことを考えても、その機先を制する形になるかもしれない。
スティーブ・ジョブズによるDRM(デジタル著作権管理)フリーへの意見書が出たのは今年2月。5月にはEMIによってiTunes PlusにDRMフリー楽曲が提供され始めた。米音楽配信業界はこのDRMフリーによって一気にその地図を変えようとしている。
今回紹介したリアルはすでにDRMフリー楽曲の提供を開始。8月21日にはgBoxが、グーグルと連携して楽曲の提供を始めた。8月24日にはウォルマートも参入。年内にはAmazonも音楽配信サービスを開始する予定。これらすべてのサービスがDRMフリーに対応している。
DRMフリーの楽曲は再生機種に依存しないため、iPodユーザーがiTunes以外の音楽配信サービスからでも楽曲購入ができるということであり、逆にiPod以上に魅力的なハード、iTunes以上のサービスが提供できれば、ユーザーの乗り換えが期待できるということでもある。
四大レーベルの一つであるユニバーサルはiTunesとの年間契約を更新せず、iTunes以外の音楽配信サービスへはDRMフリー楽曲の試験提供を始めている。これは価格操作ができないiTunesから離れて、自分たちがコントロールできるサービスを探しているということなのだが、これができるのも機種、サービスに依存しないDRMフリーがあるからだと言える。競合サービスが充実することで価格やサービス面で競争が生まれ、ユーザーはより良い音楽配信サービスを利用することができるはずだ。今後は他レーベルの参加も見込まれ、2008年にはDRMフリー楽曲が主流になることが予想される。DRMフリーという思想はユーザーにも、レーベルにも一定の利益をもたらすことになりそうだ。
これらDRMフリーの波の中、日本はどうなるのだろうか。日本でもiTunesでDRMフリー楽曲提供が始まったが、国内他社レーベルは未だ様子見状態だ。
日本では着うたなどはDRMによって、本人の機種変更にさえ対応できないものもある。ユーザーの利便性よりも著作権者とその管理者の利益を優先した結果が、現在の日本の音楽配信業界であり、DRMフリーなど考えられないことのように思える。実際、私的録音補償金制度を検討する委員会ではコピーネバーという声さえ聞かれるのが現状だ。ユーザーにも権利者にも良い制度とは何なのか、もう一度考え直すべきときが来ている。